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ホームページの事、返信、妄想、ブックレビューに愛を叫ぶ準ブログ。偏愛なので準が付く、そういうことを書いております。
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 寝つきが良くないのと、楸瑛が早朝に目覚めたのはあまり重要なことではなかった。初冬だというのに秋の様な穏やかな風が神経を逆なでさせ、すっかり慣れてしまった体内の季節感と言う物を狂わされているのは事実だ。だが数日で慣れるし、あれこれ頭の中で持ち帰った案件の事を考えていたからで、また幼少より親しみ体に染みついてしまった武術の習性という奴が緊張の糸を完全に緩めることの無いよう浅い眠りを要求する。まだ白み始める前の早朝と言うのも朝に申し訳がないような薄暗い中、小さな音を聴覚が捕らえた。
カラリカラリカラリ。
車輪が回る音だと直ぐに気付く。そして遠方から確実にこの州牧邸に近づいていることも。
覚醒は苦ではない。抗うことが苦なのだと知っているから楸瑛は素早く身を起こした。肩に滑り落ちた長い黒髪を背に流し、間近に掛けてある上着を羽織る。寝室がニ階にあるため窓の布の合間から、壁の向こうの音源が州牧邸の門前で止まっているのが確認できた。闇夜に溶けだしそうな瞳は花菖蒲の剣に向けられ当たり前のように手に取り、まだ薄暗い未明の部屋を蝋燭一つ付けることなく動きまわった。点々と明かりの灯る回廊に、そして外に出る。吐く息が透明だった。昨日も今日も、きっと明日も。この紅州において白く染まる日など来るのだろうかと疑問に思う。寒さが欠落した冬は楸瑛には珍しくもあり、日の出前なのにもかかわらず生温かい風が不気味でもあった。 軒の音はもう止んでいた。今静寂を破るのは、切れ切れに聞こえる小さな、どうにかそれだと解るような話し声だった。揉めているのが何間か先でも伝わって来る。ふわりと風が頬を撫で、髪を弄んだ。
近づくにつれより明瞭になる声と話の内容。門の直ぐそこまで着くころには筒抜けだった。急ぎの用故通してくれと頼む訪問者を突っぱねる門番を楸瑛はどうにもいけないと思った。


州牧本で没部分です。書き出しが決まらないと書けないので迷走して、結果長引きそうなので他のアプローチにしよう判断しました。ネタばれになりそうな部分は省いて、ここで公開してみました。すっぱりカットしてるので類似した描写も書かない予定です。
進行度は現在30%ほどいってればいいな…。
が、がんばりますっ
実はこれが日記エントリー100個目となりますっ。ちょっとめでたい。ささやかに喜んでみました。
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