発掘 2011/08/07__21:04

これって昔日記に載せましたっけ？
絳攸の事が好きすぎる楸瑛と言う、最近めっきり書かなくなってしまった（ぇ！？）現代パロ。

あ、引っ越し作業はあと30%ほどで終わる予定です。最後の詰め！

朝起きたら天井が自分の家のものと違った。
寝返りを打つが横には誰にもいない。決して褒められる事じゃないが、そう言う事は楸瑛にとっては比較的よくあるのでさして気にせず、慌てることなくぼんやりとした頭でさて何処の誰の家に泊まったんだろう、と思い辺りを見回す。
無愛想な幾何学模様のカーテンはきっちり閉まっていて、今が夜が開けたばかりなのか、昼なのかもわからない。ベッドの上に置いてあるデジタルの時計が点滅しながら八時十三分を示していたから朝だ。あと十一秒で十四分だ。その横に読みかけの本が見開きの部分を下にして置いてある。
Sat.と横に表記しされている通り、今日は仕事がない事にほっとした。
薄暗い視界が本棚には莫大な数の本が無造作に置いてあるのを捕らえた。机の上にはパソコンと紙が置いてあり、椅子を年中出しっぱなしなのだろうと思われるストーブと扇風機が囲んでいた。卓上カレンダーと書き込みの一部と机のいたるところに貼ってあるポストイットから誰だか分らぬ相手が多忙なのが解る。
随分殺伐とした部屋だ。華やかさがないという感想を楸瑛は抱いた。
他には――。 見覚えのあるスーツのジャケットと、ネクタイが掛っていて楸瑛は片眉を上げた。
それは紛れもなく楸瑛のものだ。
起き上がりさりげなく上半身を確認すると、ワイシャツだった事に眉をしかめて、もしやと確認するとベルトは外してあり、よく見るとハンガーにはジャケットと一緒にベルトも掛っていた。
だが常春的思考回路は本格的におかしいぞ、と導き出した。
――何で裸じゃないんだ？
何にもなかった事を疑問に思うくらい、楸瑛は女たらしだった。
「うう」昨夜の記憶を思い出そうとすると頭に鈍い痛みが走り、顔をしかめ頭に手を額にやった。しかしその痛みが二日酔いのためだと思いあたり、それを糸口にどんどんよみがえる。
同時に暗闇の中でもわかるくらいに顔色が変わった。 どうして今まで気付かなかったんだ、と自分を叱咤した。ここが誰の部屋だなんて解りきってる事じゃないか。同時に初めて入った私室の思い出がこんなだなんて、と激しく後悔した。
どうせならむさくるしい部下かあの鬼畜な上司の家の方がまだマシだ。
今の心境を例えるならば絶望という言葉がぴったりすぎて、楸瑛は悲しくなってきた。
落ち込んでるところに耳が小さな音を拾って顔を上げる。
予想通りというか今一番会いたくないような気がする人物がマグカップを持って立っていた。ドアを開ける音がほとんどしなかったのは楸瑛が寝ていると気遣ったからなのか。
ブラックコーヒーの香りがどんよりとした楸瑛を少しすっきりさせてくれる。
「ああ、もう起きてたのか。よかった」
何がよかったのか楸瑛にはさっぱり分からなかったが、その人――李絳攸は土曜日の朝だと言うのにネクタイはしていないが皺ひとつないワイシャツを着ていた。あまりのきまり様にしばし目を奪われたが、その視線に眉をしかめたためはっとした。絳攸は高校、大学の同級生で、大切な友人で――恥ずかしながらさんざん浮名を流した楸瑛の長年の片思いの相手だ。
見惚れていたのだが、絳攸は勘違いしたようで、いつもの理性的な顔でお前も飲むか、とカップを少し持ち上げて、返事を聞く前に出て行こうとした。
「待って、絳攸」
鋭い声に半分背を向けかけた絳攸が振り返った。
「一体全体どういうことだい？勿論説明してくれるだろうね」
「何がだ？俺がお前に何か説明しなきゃいけない事があるのか？」
楸瑛はすうっと大きく息を吸い込み終わるとコーヒーを呑んでいる絳攸をキッと睨みつけて、一気に言った。
「何で私を襲わなかったんだ！」
絳攸は盛大にコーヒーを吹き出し咳こんだ。


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当時の自分がこんな内容が好きだったことに愕然とします。何を考えてたんでしょう。